ニュージーランドでの生活

クライストチャーチ(南極に行く船が最後に給油する地、ニュージーランド)に永住。 日常を書く

あの人は今

今 なぜかわからないが・・・早朝 ふと 十数年前に会った ある人の事が頭に浮かんだ・・・ 今頃 どうしているのだろうか・・・?

私の経営する ホステルに もう 十数年前だが 一人の若い男が長期滞在契約で泊まった。

いつも一人でいて 多分イギリス人だったと思う。
おとなしく でも話しかけると いつも会話をしていた・・・ 何をしに ニュージーランドに来たのかは よくわからなかった。

ある日 手首を傷めていて 腕を包帯で釣っていた。 その日は夜クラブに踊りに行く予定だったので 彼を誘ったら・・「気が向いたらね・・・」 とだけ言ったので あまり期待もしていなかったが・・・ それに 手も怪我していたし・・。

だが 夜も遅くなった時にそのクラブに現れた。 いつものように ちょっと恥ずかしそうにして・・ でも 私とその夜は 沢山踊った。

彼の笑顔はその時 初めて見て そして それが最後だったうような・・・。

一ヶ月ぐらい 私のホステルに滞在して・・ その後 彼は忽然と消えたのだ・・・。 部屋には EFTPOSの機械 (店でカードで買う時に使う機械)と 書類類が散乱していた。

不思議な物が残されていたもんだ・・・。 としばらくは その機械を保管していたが・・・(うちのホステルでもその機械を使用しているので 高価な物であるのも知っていた・・・) 

だが いくら待っても彼は戻って来る様子もなかった・・。 散乱していた書類は 又 不思議な事に 全部 銀行の物だった・・ それも 色んな銀行から 来ていた・・・。

仕方がないので それらを全部 集めて・・ 取り合えず EFTPOSの機械だけは 持ち主(銀行)が居たので 連絡して 引き取ってもらった。

そうこうしている時・・・ 突然 警察から人がやってきて ”Auklandの法廷で証人として出頭してくれ” と 言った。 女の人のポリスで とてもやわらかく 笑顔で言ってくれたので その時は すんなり ”YES” と言えたけど・・・

あとでよく考えたら なんか ビビッて 尻込みするような出来事ではないか・・・。

ポリスカーで護衛されるかのように クライストチャーチまで連れて行かれ・・・ 空港で ボーディングパスを渡され 搭乗するまで警察官が付き添い・・・ 傍目を気にしながらの搭乗。

空港について 飛行機から降りると 又 そこに警察官が私を待ち伏せ。 すぐマタマタ ポリスカーに連れて行かれ(やっぱ マタマタ連行の図) でかい 裁判所に連れて行かれる。

驚くことに そこには ニュージーランドの大手銀行で働く連中が わんさと居た。

なんか 彼等との会話から察するに そのEFTPOSの機械を置いて私のホステルから消えた人が 膨大な金を色んな銀行から盗んだのなそうな・・・。

その額(融資額)は 一つの銀行から 日本円にすると 数千万・・・ 全部の銀行なら 数億にも登るという。

私からみたら 「え〜〜! どうやって???」 と言う事しか頭になかった・・・。 そして あのおとなしい彼が そんなだいそれた事をするのか〜〜? と・・・。 しかし やはり あの膨大な数の銀行からの書類と 放置された EFTPOSの機械をみれば・・ やはり あの人がやったのか・・・?

一緒にクラブで踊った事ぐらいしか 私にとっては彼の印象はなかった・・ そして とても 紳士的で とても優しくて・・・ どう考えても”悪人” と言う物には 繋がらない彼だった・・・。

そして 遠い外国にやってきて 田舎人であるニュージーランドの大手銀行から容易く大金を盗み取るって言うのだから やはり 相当頭がいいのかも・・? でもそういう奴程 ”悪人”なんだし・・ と思うが・・・

でもやっぱり 少なくとも 私にとっては 彼は”悪人”ではなかった。

しかしそれにしても 彼は若く そして 寂しい心の持ち主であったのは間違いない。 彼は単独犯であり・・彼の周りには まったく持って仲間とか 友人とか それどころか 知人の影すらなかった。 

そして その膨大な金額のお金をなんの為に得たかったのか・・・? それすら彼にとっては意味の無い物だと言う気がした。

あのクラブで私と踊った彼が 法廷で もうすぐ私の目の前に現れると思うと胸がドキドキした。 
きっと今頃は 薄汚れて 失意のどん底にいるのかも・・? と言う私の想像を 無残にも砕き・・・
彼はいつものように 小ぎれいで 私の顔も見ず 空の一点に視線はあり・・ 法廷で何が起っているのかも 感知しない と言った図だった。

彼は完全に閉ざしていた。

彼の人生は 常に閉ざされていて 何をしても つまり 全うに生きようが 犯罪を起こそうが・・彼にとっては どうでもいい事 と言う態度にも取れた。

つまらない彼の人生の中で 人と言うのを知り尽くして融資する銀行の連中をすっぱ抜く事が又 彼にとっては刺激的なゲームであったのかも・・・?

あの若い彼は 今までもそうであったように これからの人生も又すべてを閉ざして生きて行くのだろう・・ と 思った。

そう思うと あのクラブで 片腕で私の腕を取って そして笑顔を見せたのは 彼にとっては とても稀な事だったのか・・?
  1. 2013/04/18(木) 07:55:04|
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